通常の借家契約(普通借家契約)では、借主保護の立場から、借主が継続して住むことを希望している場合には、貸主からの解約や更新の拒絶は、正当な事由(戻ってそこに住む必要がある、売らなければならないなど借家を明け渡してもらう理由)がない限りできない。
このため、借家にせずに空き家のままにするなど、住宅の有効活用ができない実態があった。そこで、2000年に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」の中で、定期借家権が導入され、一定の契約期間に達したら契約が終了する借家制度が誕生した。
定期借家特有のポイントとしては、契約期間に定めがあることを明示した書面による説明、書面による契約が求められること、1年未満の契約期間の定めも有効なことなどだ。また、定期借家契約の期限が来たら必ず出ていかなければならないかというと、貸主と借主がともに合意すれば「再契約」という方法で住み続けることができる。
借主からの中途解約については、普通借家でも定期借家でも、契約時に「特約」で条件を定めるのが一般的。ただし、定期借家契約で特約がない場合は、借主に正当な事由があれば解約の申し入れができる(床面積200㎡未満の借家に限る)とされている。
つまりは、貸主の事情によって契約期限になったら契約を終了させることができる借家制度ということになる。
◆定期借家にすると誰にどういったメリットがあるのだろう?
まず、貸主について見ていこう。
賃貸経営として貸し続けるというのではなく、一定期間だけ借家にしたい、あるいは売却を考えているがしばらくは借家にしたいという場合に、定期借家は有効だ。
実際に、移住・住みかえ支援機構の「マイホーム借上げ制度」では、3年程度の定期借家契約を活用している。これは、子育ての終わった50歳以上のシニア層が、マイホームを借家として若い世代に使ってもらいながら、移住や住み替えすることを支援する制度。田舎に移住したものの一定期間後にマイホームに戻りたいという場合も、借家の契約期間満了を待って契約を打ち切ることができる。借り上げ制度なので、借主がいない場合でも、最低賃料が保証されるというメリットもある。
注目を浴びているシェアハウスで定期借家が活用される事例が多い。シェアハウスは共用部を共同で利用し、コミュニティを重視する住まいなので、ルールを守らないなど良好なコミュニテイづくりに悪影響を与える借主は困りもの。時には退去をしてもらいたい場合もある。当初半年間の定期借家契約にすれば、そういった借主の契約を半年後に終了することができる。
このように、上手に定期借家を活用すれば、マイホームを活用したり、居住者間のトラブルを減らして良好な居住環境を維持したりすることができる。
一方で、借主にはどんなメリットがあるだろう?
借主にとっては、自分が希望しても住み続けることができないというデメリットがある。そのため、貸主は借り手がつかないということを避けるために、定期借家物件の賃料を相場より下げたり、礼金を不要とするなどの事例も多い。こうした場合は、借主に金銭的なメリットが生まれる。
勿論定期借家が必ずしも相場より賃料が安いというわけではないのであくまで参考にして頂ければと思います♪